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札幌高等裁判所 昭和25年(う)224号 判決 1950年6月08日

被告人

大舘戍

主文

原判決を破棄する。

本件を旭川地方裁判所稚内支部に差し戻す。

理由

弁護人木田茂晴の控訴趣意第一点について。

しかし元来英米法における検察官の立証事項についての冒頭陳述は、主として、検察官の起訴状の朗読をきいていない陪審員に対し、起訴事実を知らせるためこれを行う必要を生ずるのである。然し、わが刑事訴訟法のもとにおける第一審の公判手続での証拠調は、検察官の起訴状の朗読に次いで、刑事訴訟法第二百九十一条第二項所定の手続を履践した後、同一の裁判官の面前で引き続き行うものであるから、かかる冒頭陳述を行う必要性に乏しいものである。従つて、同法第二百九十六条所定の冒頭陳述は訴訟の状況に応じ、適宜或は既に朗読した公訴事実を引用し、又はその冒頭陳述に代てえ個々の立証趣旨を陳述するをもつて足りるものと解するを相当とするされば本件において、検察官が冒頭陳述として、既に朗読した公訴事実を引用して証拠により証明すべき事実は起訴状記載の公訴事実全部と陳述している以上、これを目して違法ということはできない。その他、本件記録及び原審において取り調べた証拠によるも、証拠調につき何等違法のかどを発見することができないから論旨は理由がない。

(註 本件は量刑不当により破棄差戻)

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